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自己演出の為の色彩心理。

招かざる客が訪ねてきた。

たまたま私は出かける直前で、玄関を出た瞬間その人はいた。

丁度隣人との会話(適当にあしらわれたようだ)を終えたばかりで、「お出かけですか」とのたまう。

性質の悪い協調タイプ、と心の中で毒づく。

案の定「急いでいますので」と断りを入れるも、しつこく食い下がってくる。

彼女を突き動かしているのが純粋な善意であることはわかっている。

見ず知らずの人に対して自らが信じる教えを伝え、そうして真実の道(と彼女は思っていることだろう)に導くこと。

それが彼女の全てであり、そうすることが幸せにつながると信じている。

或る意味羨ましい資質ではあるが、基本疑り深い私には理解不能な話だ。

「電車に乗り遅れますので」

強い口調で突き放すと同時に、私は振り向きもせずに歩き始めた。

急いでいたのは事実であるし、これまでの経験上、この手の人とは関わるべきではない。

「生理的に苦手」と伝えた所で聞く耳は持たない。

情に絡めて集会等に連れて行こうとする。

良くも悪くも純粋なので、その教えを受け容れないことがどれほど不幸なことかをしつこく説いてくる。

盲目的な信仰の持ち主故、自らの行動がどれほど迷惑がられているかを顧みることが出来ない。

要するに「日本語が通じない」訳で、であるならばこちらもそれなりの対応を取らざるを得ないし、そうすることで身を守ってきた。

ところで、何故「性質の悪い協調タイプ」と断定したのか。

平日の昼間に訪ねてくる彼らの多くは物腰の柔らかい女性であり、決まって声のトーンが穏やかである。

セールスのようにはきはきとしておらず、回りくどい表現を好む。

服装は地味。

というか、ファッションそのものに興味がないのだろう。

単独で行動するケースは稀で、多くの場合は二人以上で押しかけてくる。

極めつけは往生際の悪さ。

冷たくあしらわれてもすがりつく姿は、まさに協調タイプそのもの。

少なくとも他の三タイプでは考えられない行動である。

…と辛辣な言葉を並べてみたが、かくいう私も協調タイプの端くれ。

だからこそ悪しき側面が鼻につくし、正直自分の欠点を見せつけられているようで気分が悪いのだ。

尤も、ここまで性質の悪い協調タイプはごく僅か。

殆どの協調タイプが気配りの利く優しい人であることを書き添えておく。

 

さて、この日の私は赤を基調とした服装。

別に自己主張をしたかった訳でも、爆発寸前の不満を抱えていた訳でもない。

朝から寒かったので、少しでも体温を上げたいと思い、意識的に赤の分量を増やしただけだ。

さぞかし自己主張の強そうな人間に見えただろうが、そういう意味では赤は正解だった。

生身の私がひ弱であっても、外見の印象がそれをカバーしてくれる。

もしこの時、明るい黄緑色のセーターを着ていたなら少しは足を止めていただろうか。

薄いグレーを身に着けたなら、もう少しやわらかな言葉でお断りをしていただろうか。

はっきりしていることは、その日赤を身に着けた私は「だらだらと喋る」協調タイプをうざいと感じていたし、急いでいることを告げた時点で引き下がらなかった相手に憤りを覚えている。

本来協調タイプの資質を持つ私が、その時ばかりは違うタイプ(敢えて書かない)が顔を見せていたのだ。

それも無意識のうちに。

無意識に選んだ色ですらこれだけの効果があるのだ、意思を持って選んだ色なら相当の効果が期待出来る。

必ずしもそれは好きな色とは限らないが、全ては自己演出の為と割り切り、「見せたい自分」に必要な色を取り入れることも時には必要なのだろう。

これはあくまで仮定に過ぎないが、それを踏まえた上で取り入れたい色が私にはある。

残念ながら極端に社交性のない私、少しでも状況を改善する為に意識的に黄色を取り入れたい。