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「私」の名前

「その漢字は印字不能ですので、書き直してください。」

私は一瞬、耳を疑った。

「戸籍上の名前」をそのまま記入しただけなのに、いきなり書き直しを要求するとは。

場所はとある銀行のロビー。

普通預金口座を開設する為の書類を提出した時の話である。

「書き直せといいますけど、これは住民票と同じ漢字ですよね?」

強い口調で確認する私。

現住所を確認する為の書類として、私は住民票を提出していた。

当然、そこには戸籍と同じ漢字が。

「でも、当行では印字出来ないんです。」

相手はその一点張り。

印字出来ないのはそちらの都合だろう?と粘ったものの、不本意ながらも書き直すこととなった。

 

戸籍上の名前は決して難しいものではない。

ただ、人名用漢字を使っているだけだ。

一般的には新字体を用いるが、名付け親である祖父が画数に拘った結果、私の名前は旧字体を用いている。

それだけのことだ。

勿論、通常の機械では印字出来ないことぐらいわかっていて、「印字不能なので」新字体を用いたいと言われれば断る理由はない。

「手書き文字でも宜しいですか」と言われれば、ありがたく受け容れる。

何れの銀行も、私の名前を尊重し、出来るだけ失礼のないよう対処をしてくれた。

それが普通だと思っていたが、どうやらそうじゃないことをあの銀行が教えてくれた。

「所詮、その程度の銀行。」

当時の私は吐き捨てるように呟いたものだが、後年「ネタになる事件」が発生。

一事が万事であることを思い知らされたのである。

 

ところで、旦那の転職に伴い、私の健康保険証も新たに発行されることとなった。

必要書類に記入を行い、後は手続きが終わるのを待つだけなのだが、ここでちょっとした問題が発生する。

私の名前である。

この頃は新字体を使うようにしているものの、公的な書類は旧字体にせざるを得ない。

案の定、「漢字が出ないんだけど?」と旦那に打診があったようだ。

別に新字体でいいけど?と私は思うのだが、若かりし頃の「拘り」を知る旦那は「漢字に拘りがあるようなので、片仮名にしてくれ。」と言ったそうな。

どうせなら平仮名で…と内心思いながらも、片仮名表記を心待ちにする私。

果たしてどうなることやら。

今から楽しみである。