寒空の下、私はiPhoneで電子書籍と出会った。
その夜はとても寒かった。
仕事を終え、慌てて京セラドームに向かった私を待っていたのは予想以上に長蛇の列。
ゴールが見えない現実に打ち砕かれながらも、折角来たからには目的を達成せねば…と気を引き締める。
それにしても、寒い。
こんなことになるなら、手袋を用意するべきだった。
…などと心の中で呟きながら、私はiPhoneを取り出す。
音楽を聴く為ではない。
電子書籍を読む為だ。
鞄の中にはiPod touchが入っているし、お気に入りのイヤホンも持参している。
その気になれば何か聴くことも可能なのだが、いざという時に「声」が聞こえないのは非常に困る。
そこまで神経質になる必要はないが、せめて動くタイミングは的確にキャッチしたい。
ということで、時間潰しに選んだのが電子書籍。
幸か不幸か、私が選んだ作品は「天使と悪魔」だった。
最初の出だしこそ苦労したものの、次第にその世界観に引き込まれ、周囲の薄暗さすら気にならなくなった。
正直、意外だった。
一応iPhoneにも同期はさせたものの、これを使って読むことなどまずないと思っていた。
第一、文字が小さい。
文庫本ですら読みにくくなっているのに、何が悲しくてiPhoneで読まなければならないのか。
本気でそう思っていた。
ごめんなさい、私が間違っていました。
私が使っているのはKinoppyだが、思いの他読みやすい字体で、長時間読み耽っても目が疲れない。
むしろ紙媒体の小説を読む方が疲れるくらいだ。
また、文字の大きさも若干大きめに設定されているのだろう。
眼鏡なしでもスムーズに読み進められる点が私には有難かった。
その日以来、私にとってiPhoneは「読書の友」となった。
iPhoneそのものは16GBしかないが、電子書籍が占める割合は意外に低く、当面は容量を圧迫することはなさそう。
iBookを含めたところで、1GBにも満たない筈だ。
大きさも片手で持つには丁度良くて、しかも全ての操作をこなすことが可能だ。
実は読みやすさではiPad miniの方が上だが、流石にあちらは片手だけでは操作出来ない。
まして混雑する地下鉄車内で読むことを思えば、iPhoneが最適なのは言うまでもない。
唯一の不満が「読みたい書物の全てが電子書籍に対応している訳ではない」ことだが、この頃では新刊本の段階から電子書籍版も発売されることが多いことから、何れ殆どの書物(絶版となったものを含む)が対応するのでは?と期待している。
<追記>
その後、縁あって我がiPhoneは32GBとなった。